子どもが寝てくれなくてイライラする夜に
もう10時なのに、まだ起きている。明日も学校なのに。何度声をかけても布団に入らず、こちらは洗い物も明日の支度も終わっていない。だんだん声が大きくなって、寝かせたあとに自己嫌悪だけが残る。この記事は、お子さんを早く眠らせる方法をならべたものではありません。親の側の夜が、いまどうして苦しくなっているのかを分けて考えて、少しでも軽くするための整理です。小学生くらいから上のお子さんを想定しており、赤ちゃんの夜泣きについては扱いません。
- 「早く寝なさい」が届きにくいのは、眠くなる時刻が本人にも動かしにくいものだから
- いらだちの正体を「子どもが寝ないこと」と「自分の時間が始まらないこと」に分けて考える
- 夜に言い聞かせるかわりに朝で決めること、寝室でのやりとりを減らす手順の作り方
「早く寝なさい」が届かない夜のこと
9時、9時半、10時。声をかけるたびに返事はあるのに、体はいっこうに布団のほうへ向かわない。三度目あたりから、こちらの声が明らかに変わってきます。言い方を変えても、時計を見せても、状況はあまり動きません。
ここでまず分けておきたいのは、「布団に入る」と「眠る」は別のことだという点です。布団に入るのは、本人がやろうと思えばできます。けれども眠ること自体は、本人にも直接は操作できません。眠くなる時刻は、その日の起きた時刻や日中の過ごし方、体のなかのリズムによって決まっていくもので、言われたからその場で早めるということができないのです。人の体にそなわった一日のリズムについては概日リズムのページにまとめています。
ですから「早く寝なさい」が届かないのは、伝え方が下手だからでも、お子さんの態度が悪いからでもないことが多いのだと思います。まだ眠くない体に向かって、眠るよう指示していることになるからです。大人でも、日曜の夜に「明日は早いから今すぐ眠ろう」と決めたところで、そのとおりにはなりません。
この記事は、家庭での過ごし方についての一般的な考え方を整理した読み物です。病気の診断・治療・予防を目的としたものではありません。夜なかなか眠れない状態が長く続くとき、日中の眠気で学校生活に支障が出ているときは、かかりつけの小児科など医療機関にご相談ください。
いらだちの正体を、二つに分けてみる
夜のいらだちは、ひとかたまりのように感じられますが、ほどいてみると別々のものが二つ入っています。ひとつはお子さんが寝ないことそのもの。もうひとつは寝るまで自分の時間が始まらないことです。
後者のほうが、じつは大きいことがあります。洗い物が残っている。明日の持ち物を確認していない。返していない連絡がある。そして、それらが全部終わったあとに、ようやく自分の時間が来る。寝かしつけは、一日の最後に置かれた仕事であり、その仕事だけは終わる時刻を自分で決められません。終わりの見えない待ち時間は、それだけで人を消耗させます。
いらだちが出てくるのは、性格の問題でも、愛情が足りないからでもありません。今日ぶんの体力がもう残っていない、というだけのことです。ここを取り違えて自分を責めはじめると、翌日の夜がさらに重くなります。
「あと30分」が積みあがる
就寝が30分延びると、こちらの自由時間が30分減ります。それが平日5日続けば、週に2時間半。減ったぶんは、たいてい自分の睡眠時間から補われます。夜ふかしをしているつもりはないのに、気がつくと自分の就寝が毎晩後ろへずれている。この積みあがり方については夜ふかしをやめたいときににも書きました。
つまりこの問題は、お子さんの眠りの話であると同時に、親の側の眠りが少しずつ削られていく話でもあります。両方をいっぺんに解こうとすると苦しくなるので、まずは削られる量を減らすほうから手をつけます。
夜に決めるより、朝で決める
眠くなる時刻を夜のうちに早めるのは、なかなか思うようにいきません。いっぽうで、起きる時刻のほうは動かせます。そして、朝の起床時刻がそろってくると、夜に眠くなる時刻もそのあとについてきやすくなるとされています。夜に言い聞かせるかわりに、朝の側で決めるという順番です。
この順番は、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」こども版にも書かれています。
小学生以降は、早起き習慣を保ったうえで、前述の推奨睡眠時間から逆算して、夜寝る時間を決めることをお勧めします。
(厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」こども版より)
逆算のもとになる時間として、同じ資料は「小学生は9〜12時間、中学・高校生は8〜10時間を参考に睡眠時間を確保する」ことを挙げています。ただし幅のある参考値ですから、うちの子に必要な長さを言い当てる数字ではありません。何時間眠らせるかを先に決めるより、朝の起きる時刻をそろえるほうから手をつける、という使い方が現実的だと思います。
とくに休みの日です。土日に昼近くまで眠ると、その夜に眠くなる時刻は後ろへ動きます。日曜の夜だけ早く寝かせようとしてもうまくいかないのは、そのためです。休日の起き方については休日の寝だめのページにまとめました。平日との差をなるべく小さくしておくと、月曜の朝が軽くなります。同じこども版にも、「週末休日も普段と同じ時間に起床して、日光を浴びましょう」と書かれています。
朝、起きたらカーテンを開けて外の光を入れる。これは大人にも子どもにも共通の手がかりで、いちばん手間がかかりません。くわしくは朝の光の浴び方をご覧ください。朝ごはんを食べる場所を、窓のそばにするだけでも変わります。
うちの子は夜型かもしれない、と思ったら
朝が得意な人と、夜のほうが調子の出る人がいます。この傾向は大人だけのものではなく、年齢とともに移り変わっていくものだと説明されます。夜型寄りのお子さんに、まわりと同じ時刻で寝るよう求め続けると、家のなかの空気だけが張りつめていきます。傾向そのものについてはクロノタイプのページで扱っています。
「よその子は9時に寝るらしい」と比べはじめると、うまくいっていない気がしてきますが、比べる相手は他所のご家庭ではなく、先週のわが家で十分だと思います。15分早くなったなら、それは前に進んでいます。
寝室でのやりとりを減らす
寝る前のやりとりは、増えるほど目が覚めます。言い聞かせも、注意も、交渉も、すべて頭を働かせる作業だからです。ここを減らすには、毎晩の流れを固定して、そのつど考えなくてよい形にしてしまうのがいちばん近道になります。
| やりがちなこと | 置きかえてみる |
|---|---|
| 「早く寝なさい」を何度も言う | 次にやることをひとつだけ言う(「歯みがきね」) |
| その日の気分で順番が変わる | お風呂・歯みがき・部屋を暗く・本を1冊、と順番を固定する |
| 寝室でその日の出来事を問いただす | 話は夕食の時間に置き、寝室では持ち出さない |
| 部屋の明かりをつけたまま声をかける | 先に明かりを落とし、暗いなかで短く声をかける |
| 寝るまで画面を見ている | 画面をやめる時刻を、時計の側で決めておく |
画面については、家庭ごとに事情が違うので一律には決められません。ただ、時刻で線を引いておくと「もう終わりにしなさい」というやりとり自体が減ります。夜の画面との付き合い方は寝る前のスマホにまとめています。
もうひとつ、暗くしたあとに残る音の問題があります。となりの部屋のテレビ、家事の物音、外を通る車。静かにしようとするほど、ひとつひとつの音が目立ちます。音量の決め方は音量の決め方をご覧ください。子ども部屋にうっすらと音を流しておくと、家のなかの物音が気になりにくくなることがあります。
親の側の夜を、先に手当てする
ここまでは、お子さんの側の工夫でした。最後に、親の側の夜のことを書いておきます。こちらのほうが、じつは効きめが早いかもしれません。
- 「今日はここまで」を先に決めておく。残った家事は翌朝に回す、と決めてしまえば、待ち時間の重さが変わります。
- 寝かしつけの部屋で、自分も横になってしまう。起きて待つより体が休まります。そのまま眠ってしまっても差し支えありません。
- 寝かせたあとの時間を、取り返そうとしない。削ったぶんは、たいてい自分の眠りから出ていきます。
- 翌日の自分に期待しすぎない。今日うまくいかなかった夜は、明日また同じ手順をやり直せば十分です。
寝かしつけのあとに目がさえてしまい、今日の言い方を思い返してしまう夜もあります。そういうときの過ごし方は考えごとで眠れない夜ににまとめました。頭のなかの言葉を止めようとするより、耳を別のところへ預けてしまうほうが楽なことがあります。
寝室を暗くしたあと、静かすぎて落ち着かないようなら、小さな音をひとつ流しておく手もあります。メロディのある子守唄は、寝室に入って気持ちを切りかえたい時間に向きます。雨や小川のような変化の少ない音は、家のなかの物音をまぎらせたいときに使いやすい音です。音の種類ごとの特徴は眠るための音の図鑑にまとめています。
どの工夫も、その夜のうちに結果が出るものではありません。今夜も布団に入るのが遅くなったとしても、それで何かが失われたわけではないと思います。夜なかなか眠れない状態が長く続くとき、日中の眠気で学校生活に支障が出ているときは、家庭での工夫を続けるよりも、かかりつけの小児科など医療機関にご相談ください。
よくあるご質問
何度言っても布団に入りません。強く叱ったほうがよいのでしょうか。
強く言うほど、そのやりとり自体で目が覚めてしまうことがあります。声の大きさを上げるかわりに、次にやることをひとつだけ短く伝えて、毎晩の順番を固定してみてください。お風呂、歯みがき、部屋を暗くする、本を1冊。順番が決まっていると、そのつど言い聞かせる回数が減ります。それでもうまくいかない夜はありますので、その夜はそこで切り上げてかまいません。
子どもが寝ないので、自分の就寝も遅くなります。
親の側の眠りを削って埋め合わせるやり方は、長くは続きません。寝かしつけのあとに残った家事は翌朝に回すと先に決めてしまうか、寝かしつけの部屋でご自分も横になってしまうほうが、起きて待つより体は休まります。削った時間をあとから取り返そうとしないことが、いちばんの手当てになります。
休みの日は、遅くまで起きていてもよいですか。
休日だけ大きく遅くなると、その夜に眠くなる時刻も後ろへ動き、月曜の朝が重くなりやすくなります。夜ふかしを一切なくすというより、起きる時刻を平日からあまり離さないようにしておくと、差が小さくてすみます。くわしくは「休日の寝だめは意味がある?」のページをご覧ください。
出典・参考
- 厚生労働省 睡眠対策
- 厚生労働省 健康づくりのための睡眠ガイド2023(PDF)
- 厚生労働省 e-ヘルスネット 健やかな睡眠と休養
※本文で引用した睡眠時間の目安・休日の起床・朝の光についての記述は、上記「健康づくりのための睡眠ガイド2023」こども版に記載されている内容です。そこに書かれていない数値は扱っていません。
ご注意
この記事は一般的な情報をまとめたものであり、病気の診断・治療・予防を目的としたものではありません。アプリ「ひつじの添い寝」は医療機器ではなく、症状の改善や治療を行うものでもありません。
眠れない状態が続くとき、日中の生活に支障が出ているときは、ひとりで抱えこまず医療機関にご相談ください。