時計のカチカチが気になって眠れない夜に|秒針の音とのつきあい方
布団に入って部屋が静まりかえったとたん、壁の時計のカチカチが耳につきはじめる。昼のあいだはまったく気づかなかったのに、夜になるとその音だけがはっきり聞こえてくる。このページでは、なぜ時計の音がそこまで気になるのかを整理したうえで、音そのものを減らす手と、ほかの音でならす手を順番に見ていきます。
- 静かな部屋ほど、小さな音が大きく聞こえてしまう理由
- 時計の音そのものを減らす、置き場所と時計選びの手
- ほかの音でならすときの、音の選び方と音量の決め方
なぜ、時計の音だけが気になるのか
秒針の音は、昼のあいだはほとんど意識にのぼりません。テレビの声、外を通る車、家族が動く気配。部屋にはいつも何かしらの音があって、そのなかに秒針の音はまぎれています。ところが夜、部屋が静まりかえると、まぎれる先の音がなくなります。音そのものの大きさは昼と変わっていないのに、聞こえ方だけが変わるのです。
静かな部屋は、小さな音を目立たせる
ある音が別の音にまぎれて聞き取りにくくなることを、マスキングと呼びます。昼の部屋では、生活音が秒針の音をおおい隠しています。夜はその「おおい」がなくなるので、同じ音が急に前へ出てくる。時計が大きくなったのではなく、まわりが小さくなった、ということです。
ですから、時計の音が気になり出したとき、原因を自分の耳の敏感さだけに求める必要はありません。部屋の音のバランスが変わったと考えるほうが、打つ手を見つけやすくなります。減らすか、まぎれさせるか。手は、その2方向にあります。
規則正しい音は、耳が追いかけてしまう
時計の音には、もうひとつ厄介な性質があります。間隔がぴたりと一定だということです。雨や風のように、いつどこで鳴るか分からない音は、しばらくすると背景に溶けていきます。ところが1秒ごとにきっちり刻まれる音は、次がいつ来るかを耳が予測できてしまう。予測できると、無意識のうちにその瞬間を待ってしまいます。
「あと何回鳴ったら眠れるだろう」と数えはじめてしまう夜があるのは、このためです。秒針は、過ぎていく時間を音の形にして知らせてきます。眠れていない時間そのものを意識させられるので、焦りとくっつきやすい音でもあります。頭のなかの考えごとが止まらない夜については、別のページで扱っています。
気になる夜と、気にならない夜がある
同じ部屋、同じ時計でも、まったく気にならない夜があります。しっかり疲れているとき、外で雨が降っているとき、暖房が静かに回っているとき。逆に、締め切りが近い夜、翌朝早く起きなければならない夜、体調をくずして横になっている時間が長い夜には、同じ音がひどく大きく感じられます。
つまり、気になるかどうかは音の大きさだけで決まっていません。部屋にほかの音があるかどうかと、その夜の気持ちの向きが、かなりの部分を占めています。「早く眠らなければ」という思いが強い夜ほど、耳は静けさのなかから手がかりを探しにいきます。ここを分けておくと、時計だけを敵にしなくて済みます。
時計の音が気になる夜は、時計が変わったのではなく、部屋の音の量とその夜の気持ちのほうが変わっています。打てる手は「音そのものを減らす」と「ほかの音でならす」の2方向です。
手その1・音そのものを減らす
音を足す工夫より先に、出どころに手を入れられないかを見ておきます。こちらのほうが手間も少なく、結果もはっきりしていることが多いからです。
置き場所を変える
音は距離で小さくなりますし、置いてある面を伝わっても届きます。動かすだけで済むなら、それがいちばん早い手です。
- 枕から離す。頭のすぐそばにある時計を、部屋の反対側の壁へ移すだけでも、聞こえ方はかなり変わります。
- 硬い面から下ろす。板張りの棚や金属のラックは、時計の振動をそのまま広げます。布を1枚敷く、引き出しの中に入れる。それだけで音の角が取れます。
- 部屋の外へ出す。いちばん確実なのはこれです。時刻を確かめたいだけなら、廊下や隣の部屋に移しても困ることはあまりありません。
ついでに、寝床から時計の文字盤が見えない向きにしておくのもおすすめです。夜中に目が覚めたとき、時刻を確かめると「あと何時間しかない」と計算が始まってしまいます。音と同じで、見えないほうが静かでいられます。
秒針の音がしない時計に替える
秒針が1秒ごとに止まりながら進む時計は、その動きのたびに音が出ます。いっぽう、秒針がなめらかに動き続けるタイプ(連続秒針、スイープ式などと呼ばれます)は、カチカチという音が出ません。デジタル表示の時計も同じです。寝室に置く1台だけを替える、という考え方なら、そこまで大がかりな話にもなりません。
買い替えるほどではない、という場合は、夜のあいだだけ電池を抜いておく方もいます。朝に入れ直す手間はかかりますが、費用はかかりません。目覚まし時計を兼ねているなら、その役目は別の機器にまかせておきます。
手その2・ほかの音でならす
時計を動かせない、替えられない、という場合もあります。同居している方の持ち物だったり、置き場所が決まっていたり。そんなときに使えるのが、さきほどのマスキングを逆向きに使う方法です。秒針の音より少しだけ大きい、変化の少ない音を部屋に置いておくと、カチカチの角が丸くなります。
ここで大事なのは、時計の音を「消す」わけではない、ということです。音は消えません。ほかの音のなかにまぎれて、目立たなくなるだけです。だから必要な音量は、思っているよりずっと小さくて足ります。かき消そうとして音量を上げると、こんどは流している音のほうが気になります。
どんな音を選ぶか
選ぶときの基準は、3つだけ覚えておけば十分です。
- 変化の少ない音。強くなったり弱くなったりする音は、その山のたびに意識が戻ります。せんぷうきのような生活音や、密度のそろった雨音のほうが扱いやすくなります。
- 意味を持たない音。歌詞のある曲や人の話し声は、内容のほうへ意識が向いてしまいます。眠る前に置いておく音としては向きません。
- ひとつだけ選ぶ。あれこれ足すと、こんどはその組み合わせが気になります。今夜はこれ、と決めてひとつの音で通すほうが、結果として静かに感じられます。
変化の少ない音そのものについては、ホワイトノイズのページでもう少しくわしく扱っています。部屋がもともと静かな場合は、密度の高い音より、すき間の多い薄い音のほうが落ち着くこともあります。日中に何種類か聞き比べて、耳が引っかからないものを1つ決めておくと、夜に迷わずに済みます。
夜に音を流すときの決めごと
音を足す方法をとるなら、決めごとを先に用意しておくほうが安心です。眠くなってから操作しようとすると、たいていうまくいきません。
- 音量は横になってから決める。立って操作しているときの耳と、枕に頭を預けたときの耳では、聞こえ方が変わります。秒針が気にならなくなったところが上限で、それより上げません。
- 止まる時間を決めておく。朝まで流し続けると、こんどはその音がないと落ち着かない、ということが起こりがちです。寝つくまでの時間に少し足したくらいの長さで、自動的に止まるようにしておきます。
- 終わり方をゆっくりに。音がぷつりと切れると、その瞬間に静けさが戻って気づいてしまいます。だんだん小さくなって消えるほうが、切り替わりに気づきにくくなります。
音量そのものの決め方は、眠るときの音量のページでも扱っています。イヤホンで流す場合は、スピーカーのときよりさらに控えめにしてください。耳への負担は、音量と時間の掛け算になります。
時計の音とのつきあい方で、できること・できないこと
最後に、正直な線引きをしておきます。
できること。時計を遠ざけたり、ほかの音のなかにまぎれさせたりして、耳が引っかかる回数を減らすこと。毎晩おなじ手順を踏むことで、「これから眠る時間だ」という区切りを自分に作ること。時間を決めて、音を自動的に止めること。
できないこと。音の工夫そのものが眠りを作ってくれるわけではありません。時計の音への対処は、部屋の音環境を整えるための道具のひとつです。眠りは、光の浴び方や食事・運動の時間、日中の過ごし方など、生活全体とつながっています。一般的な情報は、厚生労働省のe-ヘルスネットや睡眠対策のページで確認できます。
それから、音が気になること自体を「気にしすぎだ」と切り捨てないでください。気になるものは気になります。自分を責める方向ではなく、置き場所を変える、音をひとつ足すといった、手の届くところから動かしていくほうが長く続きます。
そして、眠れない状態が続くときや日中の生活に支障が出ているときは、音の工夫だけで抱えこまず、医療機関にご相談ください。
よくあるご質問
時計を部屋から出せないときは、どうすればよいですか。
まず、枕からできるだけ離れた場所へ動かしてみてください。硬い棚の上に直接置いていると振動が伝わるので、布を1枚はさむだけでも音の角が取れます。それでも気になるときは、秒針の音より少し大きいくらいの変化の少ない音を小さく流して、カチカチを目立たなくする方法があります。
秒針の音が気になるのは、神経質だからでしょうか。
静かな部屋では、それまでまわりの音にまぎれていた小さな音が、そのまま前に出てきます。時計の音は間隔が一定で、次に鳴る瞬間を耳が予測できるため、いっそう気づきやすくなります。自分の耳の敏感さより、部屋の音のバランスが変わったと考えるほうが、打つ手を見つけやすくなります。
時計の音を目立たなくするために、別の音を朝まで流しても平気ですか。
決まりはありませんが、朝まで流し続けるより、寝つくまでの時間に合わせて止める使い方のほうが扱いやすいです。「ひつじの添い寝」のスリープタイマーはオフ/15/30/45/60/90分から選べ、終わりは約30秒かけてゆっくり音が消えます。
出典・参考
- 厚生労働省 e-ヘルスネット 健やかな睡眠と休養
- 厚生労働省 睡眠対策
- 厚生労働省 健康づくりのための睡眠ガイド2023(PDF)
ご注意
この記事は一般的な情報をまとめたものであり、病気の診断・治療・予防を目的としたものではありません。アプリ「ひつじの添い寝」は医療機器ではなく、症状の改善や治療を行うものでもありません。
眠れない状態が続くとき、日中の生活に支障が出ているときは、ひとりで抱えこまず医療機関にご相談ください。