ASMRは睡眠の質を下げる?音そのものと「画面・音量」を分けて考える
ASMRの動画を流しながら眠っている方から、「これって、かえってよくないのでは」という声を聞くことがあります。検索してみると、下がるという話も、よく眠れたという話も、どちらも出てきます。この記事では白黒をつけるかわりに、音そのものの話と、それをどう流しているかという話を、いったん分けて整理してみます。
- 「ASMRだから下がる/上がる」と断定できる資料を、この記事では示せないこと
- 気になりやすいのは音そのものより、画面の光・音量・再生の途切れといった「流しかた」のほうであること
- 画面を消す、音量を下げる、時間で止める、という今夜からの見直し方
「ASMRは睡眠の質を下げる」という話の立ち位置
ASMRという言葉が指しているもの
ASMRは、ささやき声、紙をこする音、髪をとかす音、指先で軽くたたく音などを聞いたときに、頭や首のあたりがぞわぞわとするような感覚を指す言葉として使われています。もともとはインターネット上で名づけられた言い方で、医学の用語として定まったものではありません。近ごろは、そうした感覚を起こすことをねらって作られた動画や音声そのものを指して「ASMR」と呼ぶことも増えました。
感じ方には個人差が大きく、同じ音を聞いても、心地よいと感じる人、何も感じない人、むしろ落ち着かなくなる人がいます。「みんなが同じように感じる音」ではない、というところが出発点になります。
どちらとも断定できません
「ASMRは睡眠の質を下げる」「かえって眠れなくなる」という話がある一方で、「これがないと寝つけない」という体験談も同じくらい見つかります。どちらも、その方にとっては本当のことなのだと思います。ただ、この記事では、どちらかを裏づける資料を示すことができません。ASMRという言葉が使われはじめてからの時間が短く、公的機関がまとめた説明も見あたらないためです。
ですからこの記事では、よい・悪いを決めにいきません。かわりに、寝る前にASMRを流しているという場面を、いくつかの要素に分けて眺めてみます。分けてみると、手を打てるところと、そうでないところがはっきりしてきます。
この記事は一般的な情報を整理した読み物です。眠りに関する医学的な判断をするものでも、特定の音に効果があるかどうかを述べるものでもありません。
「音そのもの」と「流しかた」を分ける
寝る前にASMRを流しているとき、実際に起きていることは、たいてい次のふたつが重なっています。
- 音そのもの……どんな音が、どのくらいの音量で耳に届いているか
- 流しかた……何の機械で、画面をどうして、いつまで流しているか
「ASMRはよくないらしい」と語られる場面をよく読んでみると、後ろのほうの話をしていることが少なくありません。スマートフォンを枕元に置き、画面をつけたまま、動画サイトで再生し続ける。この状態には、音そのものとは別の要素がいくつも混ざっています。
| 気になっている点 | どちらの話か |
|---|---|
| 画面がついたままになっている | 流しかた |
| 広告が急に大きな音で入る | 流しかた |
| 途中で再生が止まる/別の動画が始まる | 流しかた |
| 音量が大きすぎる | 流しかた(音そのものとも関係します) |
| ささやき声が気になって目が冴える | 音そのもの |
こうして並べてみると、多くが「流しかた」の側に寄っていることが分かります。ASMRをやめるかどうかを考える前に、まずこちらを見直したほうが早い、ということでもあります。順に見ていきます。
画面のこと——寝室の光について公的な資料が書いていること
まず画面です。動画としてASMRを流している場合、多くは画面がついたままになります。この点については、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」に記述があります。
同ガイドの「良質な睡眠のための環境づくりについて」という項目では、ポイントのひとつとして「寝室にはスマートフォンやタブレット端末を持ち込まず、できるだけ暗くして寝ることが良い睡眠につながる」ことが挙げられています。理由として、近年の照明器具やスマートフォンにはLEDが使われており、体内時計への影響が強い短波長光(ブルーライト)が多く含まれていること、が説明されています。
また同ガイドは、就寝の約2時間前から睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌が始まり、それ以降に照明やスマートフォンの強い光を浴びると、その分泌が抑制されることから入眠が妨げられる、と報告されていることにも触れています。光とメラトニンのかかわりについては、当サイトのメラトニンとはのページで、同ガイドの記述をまとめています。
寝ている間の、低い照度の光
眠りにつくまでだけでなく、眠っている間についても記述があります。同ガイドは、寝ている間は低い照度の光でも中途覚醒時間を増加させ、睡眠の効率を下げることが報告されているとして、寝室の照明にも配慮することは重要と考えられる、としています。
枕元で画面がついたままになっている状態は、まさにこの「低い照度の光」がすぐそばにある状態です。ASMRの音がどうかという話に入る前に、画面が明るいままであること自体が、別に切り分けて考えられる点だといえます。
寝そべって画面を見るという姿勢
同ガイドのこども版には、寝そべりながらデジタル機器を使うと、ディスプレイの視聴距離が近くブルーライトを浴びやすくなる、という説明もあります。布団のなかで顔のすぐ近くに画面を持ってくる姿勢は、大人でもめずらしくないと思います。
できることは、そう複雑ではありません。画面を伏せる、機械を手の届かない場所に置く、あるいは動画ではなく音声だけで流せるものに替える。どれも、音そのものを変えずにできる見直しです。広告や再生時間の話とあわせて、睡眠中に流す音は広告なしでのページにも書いています。
音量とイヤホンのこと
次に音量です。ASMRとして作られた音は、ささやき声や細かいこすれ音など、もともと小さな音を近くで拾ったものが多くあります。それを「よく聞こえるように」と音量を上げると、音源のなかにときどき混ざっている大きめの音まで、一緒に大きくなります。眠りかけたところで音が跳ねて目が覚める、というのはよく聞く話です。
音量の決め方としては、「聞こえるか聞こえないか」くらいまで下げてみて、それでも過ごせるかを見る、という順番が扱いやすいと思います。あとから上げるのは簡単ですが、大きい音に慣れてしまうと、下げるほうは難しくなるからです。
イヤホンをつけたまま眠る場合は、次のようなことも気にかけておきたいところです。
- 長い時間、耳のすぐそばで音が鳴り続けます。音量は控えめにしておきます
- 寝返りでコードが引っかかったり、イヤホンが外れて見あたらなくなったりします
- 耳をふさぐと、目覚まし、家の物音、同居の方の声が聞こえにくくなります
- 時間がきたら自動で止まるようにしておくと、朝まで鳴り続けずにすみます
耳のことで気になる状態が続くときは、我慢して使い続けず、医療機関にご相談ください。
音そのものが合わないこともあります
ここまで流しかたの話をしてきましたが、もちろん、音そのものが合わないということもあります。
ささやき声は、言葉です。意味のある言葉が耳に入ると、内容のほうへ注意が向いてしまう方がいます。「いま何と言ったのだろう」と考えはじめると、静かになるどころか頭は働き続けます。眠るために流したはずの音が、聞き取るための音になってしまう、という状態です。
また、口の音やものを噛む音のように、特定の音がどうしても気になってしまう、という方もいます。人気があるからといって、苦手な音を無理に聞き続ける必要はありません。合う音は人によって違いますし、同じ人でも日によって変わります。
そういうときは、言葉を含まない音に替えてみる方法があります。雨の音、波の音、たき火のはぜる音のように、次に何が来るかを自分で考えなくてよい音です。当サイトでは、音ごとに眠るための音の図鑑としてまとめています。たとえば雨音は、強さの好みが人によってはっきり分かれる音でもあります。
「よいと言われている音」と「自分に合う音」は、別のものです。三晩ためして落ち着かないようなら、その音は今の自分には合わない、というだけのことだとお考えください。
今夜からできる、5つの見直し
最後に、今夜ためせる形にまとめます。全部を一度にやる必要はありません。上から順に、ひとつずつで十分です。
- 画面を消すか、伏せる。音だけで流せるものに替えられるなら、そのほうが確実です
- 音量を、いまより一段下げる。「聞こえるか聞こえないか」を目安にします
- 時間がきたら自動で止まるようにする。音を止めるために起き上がらずにすみます
- あらかじめ機械に保存しておく。回線が途切れて再生が止まったり、次の動画が勝手に始まったりしにくくなります
- 一晩で決めない。眠れなかった理由は、その日の出来事や体調のほうにあることもあります
なお、無料で音を流せるサービスがどのように成り立っているのかについては、睡眠アプリは危険?のページで、広告や情報の取り扱いという観点から整理しています。あわせてご覧ください。
よくあるご質問
ASMRを流したまま眠るのは、やめたほうがよいのでしょうか。
やめたほうがよい、と言い切れる資料をこの記事では示せません。気になりやすいのは音そのものより、画面がついたままであることや音量の大きさです。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、寝ている間は低い照度の光でも中途覚醒時間を増加させ、睡眠の効率を下げることが報告されている、として寝室の照明への配慮を挙げています。
イヤホンをつけたまま眠っても大丈夫ですか。
長い時間、耳のすぐそばで音が鳴り続けることになります。音量は控えめにし、時間がきたら自動で止まるようにしておくと安心です。寝返りでコードが引っかかる、イヤホンが外れて見あたらなくなる、目覚ましや家の物音が聞こえにくくなる、といった点もあわせてご検討ください。耳のことで気になる状態が続くときは、医療機関にご相談ください。
ささやき声が気になって、かえって目が冴えてしまいます。
ささやき声は言葉ですので、内容のほうに注意が向いてしまう方もいます。合う音は人によって違いますし、同じ人でも日によって変わります。雨、波、たき火のような、言葉を含まない音に替えてみるのもひとつの方法です。
出典・参考
- 厚生労働省 健康づくりのための睡眠ガイド2023(PDF)/「良質な睡眠のための環境づくりについて」および「こども版」より
- 厚生労働省 睡眠対策
- 厚生労働省 e-ヘルスネット 健やかな睡眠と休養
ご注意
この記事は一般的な情報をまとめたものであり、病気の診断・治療・予防を目的としたものではありません。アプリ「ひつじの添い寝」は医療機器ではなく、症状の改善や治療を行うものでもありません。
眠れない状態が続くとき、日中の生活に支障が出ているときは、ひとりで抱えこまず医療機関にご相談ください。