夜勤・交代勤務の眠り方|仮眠と光との付き合い方
夜勤明けの朝、まぶしい日ざしのなかを帰る。日勤に戻った日の夜、目だけが妙に冴えている。勤務の時間帯が変わる働き方では、眠る時間を自分の都合だけで決めることができません。この記事では、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」に書かれている内容を中心に、仮眠と光をめぐって語られている工夫をまとめます。
- 公的なガイドが「交替制勤務」をどう定義し、どう位置づけているか
- 夜勤中の仮眠について、時間帯と長さの目安として書かれている数字
- 光を浴びる・光を避けるという考え方と、その効きめの限界
交代勤務とは、どんな働き方を指すのか
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」には、就業形態と眠りをあつかった章があります。そこでは「交替制勤務」という言い方で、始業時刻と終業時刻の組み合わせ(勤務時間帯)が固定されず、日ごとあるいは一定の期間ごとに勤務時間帯が変化する勤務形態と説明されています。勤務時間帯が夜から朝までの1パターンのみの場合は、この言葉には含まれない、とも書かれています。
同じ章では、厚生労働省の労働者健康状況調査を引いて、わが国の労働者のうち交替制勤務者は10〜20%弱を占め、特に製造業において高いといわれている、と紹介されています。めずらしい働き方ではない、ということです。
この記事では読みやすさのために「交代勤務」と書きますが、ガイドの記述を紹介するところでは、原文どおり「交替制勤務」と表記します。
この記事は、公的機関が公開している資料の内容をまとめた読み物です。体調の相談や、勤務の組み方についての個別の判断は、職場の産業医や医療機関にご相談ください。この記事に書かれた工夫を行うことで、何かが良くなると約束するものではありません。
体内時計に逆らって過ごす、ということ
同ガイドは、交替制勤務を体内時計の機能に逆らって生活せざるを得ないため、身体に負担のかかる業務形態と書いています。そのうえで、ガイドが推奨している対策が参考にならない場合もあると思われる、とわざわざ断っています。日勤で暮らす人に向けた「朝は光を浴びて、夜は暗くして」という助言が、そのままの形では当てはまらないからです。
光と体内時計の関係については、一般的には朝に光を浴びると体内時計が前進(早寝・早起き化)し、夕方以降に光を浴びると体内時計が後退(遅寝・遅起き化)する、と説明されています。夜に働き、朝に帰る生活は、このふたつを同時にやっているような形になります。
体内時計にかかわるホルモンについては、メラトニンの項でも取り上げています。眠気と体温の関係が気になる方は、深部体温の項もあわせてご覧ください。
夜勤中の仮眠は「短めに」と書かれている
交替制勤務の章で、いちばん具体的な数字が出てくるのが仮眠の話です。ガイドには、夜勤中の仮眠は仕事の効率について良い方向の報告があるとしたうえで、0〜4時に開始する20〜50分間の仮眠について、眠気や仕事の効率、疲労の面で良い報告があると紹介されています。
おもしろいのは、そのすぐあとに反対向きの報告も併記されている点です。仮眠時間を60分間と長めに設定した研究では、仮眠をとるとかえって仕事の効率が下がったと報告されている、と書かれています。長く休めば休むほどよい、という単純な話ではないわけです。
そのほか、夜勤中の仮眠が夜勤後の睡眠に及ぼす影響については、多くの研究において影響はほとんどないとされている、という記述もあります。夜勤前にとる仮眠、夜勤後にとる仮眠についても、それぞれ報告が紹介されています。
| 項目 | ガイドに書かれていること |
|---|---|
| 始める時間帯 | 0〜4時に開始する仮眠についての報告が挙げられている |
| 長さ | 20〜50分間の仮眠について、眠気・仕事の効率・疲労の面で良い報告 |
| 長すぎる場合 | 60分間に設定した研究では、かえって仕事の効率が下がったという報告 |
| 夜勤後の睡眠への影響 | 多くの研究において、影響はほとんどないとされている |
| 職場に望まれること | 休養時間の確保と、静かで快適に休養できる場所の整備の検討 |
最後の行は、個人の心がけの話ではありません。ガイドには、夜勤中に適切に仮眠がとれるよう、休養時間の確保や、静かで快適に休養できる場所の整備についても検討することが望まれる、と書かれています。仮眠を「気合いで我慢しないこと」ではなく「職場の環境として整えるもの」として扱っている点は、読んでおいて損のないところだと思います。
目覚めたあとのぼんやり感(睡眠慣性)
長い仮眠でかえって効率が下がる理由として、ガイドは、仮眠が長すぎると眠りが深まり、覚醒後の強いぼんやり感(睡眠慣性)が生じやすいためと考えられる、と説明しています。うっかり1時間眠ってしまい、起きたあとしばらく頭が動かない。あの感覚に名前がついている、ということです。
眠りが深まる過程については、ノンレム睡眠の項でも触れています。仮眠のあとにすぐ持ち場へ戻る必要がある働き方では、この「起きたあと」までを含めて時間を決めることになります。
カフェインを先に、仮眠をあとに
ガイドには、コーヒーなどでカフェインを摂取してから仮眠を開始すると、カフェインの覚醒作用によって仮眠後の目覚めが容易になるとともに、睡眠慣性も生じにくくなるとの報告がある、と書かれています。順番が逆ではないところが、この話の要点です。
いっぽうで、カフェインの摂取が過剰になると、健康や睡眠に悪い影響を及ぼす可能性があるとも併記されています。夜勤のあいだ中ずっと飲み続ける、という使い方は想定されていません。
光を浴びる、光を避ける
光には体内時計を調整する作用があるため、意図的に光を浴びたり、サングラス等を用いて遮光したりすることで、体内時計を交替制勤務に合わせようという試みもなされている、とガイドは紹介しています。ただし、そのあとに続く但し書きのほうが重要です。
実生活で1日当たりに修正(前進・後退)できる体内時計の時間は、数分から数時間程度とされています。そのため、この方法だけで交替制勤務に体内時計を合わせるのは難しいことに加えて、時に翌日以降の生活に悪い影響を及ぼす可能性があるため注意が必要である、と書かれています。
光を浴びる時間をずらせば体内時計を自由に動かせる、という話ではないわけです。動かせる幅には限りがあり、動かしたぶんは翌日以降にも影響します。
週に1〜2回の夜勤なら、という考え方
ガイドは、夜勤の入り方によって方針が変わることを、はっきり書き分けています。週に1〜2回程度の夜勤シフトが入る交替制勤務の場合には、夜勤明けも日勤日と同じように朝から午前中に日光を浴び、体内時計を日勤日のほうに合わせて(夜勤によるずれができるだけ生じないように)生活する方法もある、と紹介されています。
この場合の過ごし方として、次のように書かれています。
- 夜勤明けでもすぐには眠らず、夕方以降から眠る
- そのときは、普段よりやや長めの睡眠時間を確保する
- 翌朝は、日勤日と同じくらいの時刻に起きる
- 可能であれば、夜中に職場で強い照明を避けるようにする
ただし、より頻回に夜勤シフトが入る勤務体系の場合は、この方法だと睡眠不足がより深刻な問題となる可能性もあるため、注意が必要とも書かれています。自分の勤務がどちらに近いかで、すすめられている方向が変わるということです。ひとつのやり方を万人向けの正解として覚えてしまうと、かえって困ることになります。
昼に眠る部屋を、夜のようにする
同じガイドには「良質な睡眠のための環境づくりについて」という章もあります。そこでは、寝室にはスマートフォンやタブレット端末を持ち込まず、できるだけ暗くして寝ること、寝室は暑すぎず寒すぎない温度にすること、できるだけ静かな環境で、くつろげる寝衣・寝具で眠ることが挙げられています。
光については、寝ている間は低い照度の光でも中途覚醒の時間を増やし、睡眠の効率を下げることが報告されており、寝室の照明にも配慮することは重要と考えられる、と書かれています。昼に眠る人にとっては、この「暗くする」がいちばん手強い相手になります。遮光のカーテンやアイマスクの出番はここです。
音についても、同じ章で触れられています。寝室内で測定した騒音が、睡眠の効率の低下や、入眠までの時間・中途覚醒の時間の延長と関連していたという研究が紹介されており、静かな環境の確保が重要と考えられる、とまとめられています。
とはいえ、昼間の家のまわりから生活音を消すことはできません。宅配便、掃除機、子どもの声、通りを行く車。完全な静けさが作れないとき、耳に入る音のほうを自分で決めておくという過ごし方をする人もいます。どんな音があるのかは眠るための音の図鑑にまとめました。
音を流すときに気をつけたいことを挙げておきます。
- 音量は「聞こえるか聞こえないか」くらいまで小さくします
- 途中で大きく変化しない、同じ調子の続く音を選びます
- 止めるために起き上がらずにすむよう、時間がきたら自動で止まるようにしておきます
- 寝入ったあとに広告や次の動画が流れないものを選びます(広告なしで音を流す工夫)
- イヤホンで長い時間流すときは、音量と耳への負担に気をつけます
- 職場の仮眠室では、まわりに音が漏れないよう配慮します
工夫では追いつかない日が続くときは
ガイドの交替制勤務の章は、冒頭のポイント欄で、交替制勤務では健康上のリスクに注意が必要であることと、眠りの不調や睡眠休養感の低下、業務中の眠気が続いて日常生活に支障を来している場合は、速やかに医療機関を受診することを挙げています。記載されている内容を実践しても支障が続く場合は受診をすすめる、という書き方です。
ここまで紹介してきた工夫は、あくまで支障が出ていない範囲での過ごし方の話です。眠れない状態や日中の眠気が続いているなら、仮眠の長さを何分にするかを悩むより先に、相談する相手を見つけるほうが早道です。職場に産業医や保健師がいる場合は、勤務の組み方や仮眠室の環境について相談できることもあります。
眠りについて自分で調べたいときは、厚生労働省が公開している資料にあたるのもひとつの方法です(ページ末尾の「出典・参考」をご覧ください)。
よくあるご質問
夜勤中の仮眠は、どのくらいの長さがよいのでしょうか。
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」には、0〜4時に開始する20〜50分間の仮眠について良い方向の報告があると書かれています。いっぽうで仮眠時間を60分間と長めに設定した研究では、かえって仕事の効率が下がったという報告も併記されています。実際にとれる長さは休憩の取り方や業務内容によって変わりますので、職場の決まりに合わせてご判断ください。
夜勤明けに日光を浴びないほうがよいのでしょうか。
同ガイドには、週に1〜2回程度の夜勤シフトが入る場合について、夜勤明けも朝から午前中に日光を浴びて体内時計を日勤日に合わせる方法もある、と紹介されています。いっぽうで、より頻回に夜勤シフトが入る勤務体系では、この方法だと睡眠不足がより深刻な問題となる可能性があるため注意が必要、とも書かれています。勤務の入り方によって話が変わるところで、一律の答えはありません。
昼に眠るとき、音は流したほうがよいですか。
流したほうがよいという決まりはありません。同ガイドは、できるだけ静かな環境で眠ることをすすめています。昼間は生活音を消しきれないことも多いので、耳に入る音を自分で選んでおきたいときは、音量を小さくし、時間がきたら自動で止まるようにしておくと、止めるために起き上がらずにすみます。
出典・参考
- 厚生労働省 健康づくりのための睡眠ガイド2023(PDF) ※本文中の交替制勤務に関する記述は INFORMATION 6「就業形態(交替制勤務)と睡眠の課題について」、寝室環境に関する記述は INFORMATION 1「良質な睡眠のための環境づくりについて」より
- 厚生労働省 睡眠対策
- 厚生労働省 e-ヘルスネット 健やかな睡眠と休養
ご注意
この記事は一般的な情報をまとめたものであり、病気の診断・治療・予防を目的としたものではありません。アプリ「ひつじの添い寝」は医療機器ではなく、症状の改善や治療を行うものでもありません。
眠れない状態が続くとき、日中の生活に支障が出ているときは、ひとりで抱えこまず医療機関にご相談ください。