羊を数えても眠れないのはなぜ?英語のsheepと日本語のちがい
布団に入って羊を数えてみたけれど、百匹を超えても目は冴えたまま。そんな夜を過ごしたことはありませんか。この数え方はもともと英語圏で語られてきたもので、日本語に置きかえると、少し勝手が変わります。
- 羊を数える方法は英語圏の言い伝えとして語られてきたこと
- 英語のsheepと日本語の「ひつじが一匹」の音のちがい
- 数えるかわりに、外から流れる音へ注意を向けるという方法
羊を数えるのは、もともと英語圏の話
眠れないときに羊を数える。日本でもよく知られたおまじないのような方法ですが、もとをたどると英語圏で語られてきたものとして紹介されることの多い習慣です。英語には「counting sheep(羊を数える)」という言い回しがあり、寝つけない夜のたとえとして、物語のなかや会話のなかに登場します。
ただし、起源を確かめられる資料は確認できていません。以下は、由来として語られている説明です。由来をめぐる話には、ひつじ飼いが群れの数を確かめる暮らしから生まれた、という説明もあれば、次に述べる音の近さから生まれた、という説明もあります。
日本語の「ひつじが一匹、ひつじが二匹」という数え方も、この英語圏の言い伝えが紹介されるなかで広まった、と説明されることがあります。これもまた、出所をはっきり示せる話ではありません。
この記事は、言葉の成り立ちについての読み物です。眠りに関する医学的な説明をするものではありません。数え方によって眠れるようになる、という話でもありませんので、そのつもりでお読みください。
「sleep」と「sheep」——音が近いという説明
羊が選ばれた理由としてよく語られるのが、英語の「sleep(眠る)」と「sheep(羊)」の音の近さです。並べて発音してみると、最初の音が違うだけで、あとはほとんど同じ響きになります。sheep を何度も口にしたり、頭のなかで唱えたりすると、sleep によく似た音をずっと繰り返していることになる、という説明です。
言葉遊びとして語られる説明ですが、由来を裏づける資料は確認できていません。語源として確定した話ではありません。
もうひとつ、sheep の出だしの「sh」は、息を細く長く吐きながら出す音です。ひとつ数えるたびに、ゆっくり息を吐くことになる、という説明もときどき見かけます。こちらも確かめられる話ではありませんが、英語で数えたときの口の動きが、日本語の「ひつじ」とはずいぶん違うことは、実際に声に出してみると分かります。
数が増えても形が変わらない英語のsheep
英語の sheep には、もうひとつ数え歌に向いた性質があります。sheep は、一匹でも百匹でも sheep のままで、複数になっても形が変わりません。one sheep, two sheep, three sheep ……と、いくつまで進んでも、口にする言葉のかたちは同じです。
数える言葉が変わらないので、同じリズムを、同じ調子のまま、いつまでも続けられます。羊を数えるという方法が英語圏で語り継がれてきたことと、この単純さは相性がよさそうに見えます。
日本語の「ひつじが一匹」は、音の作りが違う
いっぽう日本語では、「ひつじが一匹(いっぴき)、ひつじが二匹(にひき)、ひつじが三匹(さんびき)」と数えます。お気づきのとおり、助数詞の「匹」は、前に来る数によって「ぴき」「ひき」「びき」と読み方が変わります。
六匹(ろっぴき)、八匹(はっぴき)、十匹(じっぴき)と、数が進むほど読みの変わる場所も増えていきます。英語の sheep のように、同じ言葉をそのまま繰り返せばよい、というわけにはいきません。そして「ひつじ」という言葉と「眠る」という言葉のあいだには、sleep と sheep のような音のつながりもありません。
| くらべる点 | 英語 | 日本語 |
|---|---|---|
| 数え方 | one sheep, two sheep, three sheep … | ひつじが一匹、ひつじが二匹、ひつじが三匹 … |
| 数が増えたときの形 | sheep のまま変わらない | いっぴき・にひき・さんびきと読みが変わる |
| 「眠る」を表す語との音 | sleep と sheep が近い | 「ひつじ」と「眠る」に音のつながりはない |
| 口の動き | 「sh」で息を細く長く吐く | 「ひ・つ・じ」と音を切って発する |
つまり、英語の counting sheep が持っていた「よく似た音を、同じかたちのまま繰り返す」という性質は、日本語に置きかえた時点でほとんど残っていないことになります。日本語で数えても英語と同じにはならない、という言い方のほうが正確かもしれません。
もちろん、日本語で数えることに意味がない、という話ではありません。ただ、うまくいかなかったときに「自分のやり方が悪いのだろうか」と考える必要はない、ということです。もとの言い伝えと、いま口にしている言葉は、そもそも別のものになっています。
単調な繰り返しがしていること
言葉のちがいをいったん離れて、羊を数えるという行いそのものを見てみます。同じ言葉を、同じ調子で、静かに繰り返す。この方法の中心にあるのは、その単調さです。
単調な繰り返しが気がかりなことから注意をそらす、という説明もあります。ただし、羊を数えることが睡眠に与える効果について、本サイトで示せる根拠はありません。
いっぽうで、数えること自体が仕事になってしまう場合もあります。「いま何匹まで数えたか」「ちゃんと続けられているか」を確かめはじめると、頭は静かになるどころか働きつづけます。百匹を超えたあたりから、眠れていないことのほうが気になってくる。そんな夜は、めずらしくありません。
数えることが「作業」に変わったと感じたら、そこでやめてかまいません。最後まで数えきらなければいけない決まりはありません。うまくいかない方法を続けることが、そのまま気がかりの種になってしまうこともあります。
数えるかわりに、音のほうへ注意を預ける
自分で言葉を作り出すかわりに、外から流れてくる音のほうに注意を向ける、という過ごし方もあります。雨の音、波の音、たき火のはぜる音、静かな子守唄。どれも、次に何が来るかを自分で考えなくてよい音です。
数えているときのように「続けなければ」と身構えなくてよいところが、この方法の気楽さだと思います。うまく数えられているかを確かめる必要もありません。聞こえていても、聞き流していても、どちらでもかまわないからです。
音を使うときに気をつけたいことを、いくつか挙げておきます。
- 音量は「聞こえるか聞こえないか」くらいまで小さくします
- 途中で大きく変化しない、同じ調子の続く音を選びます
- 音を止めるために起き上がらなくてよいよう、時間がきたら自動で止まるようにしておきます
- イヤホンで長い時間流すときは、音量と耳への負担に気をつけます
- 同居の方がいる場合は、翌朝に一言たずねて、音量を決めておくと安心です
なお、眠りそのものについて気になることがあるときは、公的機関がまとめている情報にあたるのもひとつの方法です。厚生労働省は睡眠に関する情報を公開しています(ページ末尾の「出典・参考」をご覧ください)。
よくあるご質問
羊を数えるのは、やめたほうがよいのでしょうか。
やめなければいけない決まりはありません。数えていて気持ちが静かになるなら続けてかまいませんし、数えること自体が気になってきたら、その時点でやめてかまいません。
英語で「one sheep, two sheep」と数えたほうがよいですか。
英語のsleepとsheepは音が近い、という説明はよく語られますが、この記事では裏づけとなる資料を示せません。慣れない言語で数えることのほうが気がかりになるようでしたら、無理に英語にする必要はありません。
数えるかわりに、何をすればよいですか。
外から流れてくる音に注意を向ける方法があります。音量は小さめにし、時間がきたら自動で止まるようにしておくと、音を止めるために起き上がらずにすみます。
出典・参考
- 厚生労働省 睡眠対策
- 厚生労働省 e-ヘルスネット 健やかな睡眠と休養
- 厚生労働省 健康づくりのための睡眠ガイド2023(PDF)
ご注意
この記事は一般的な情報をまとめたものであり、病気の診断・治療・予防を目的としたものではありません。アプリ「ひつじの添い寝」は医療機器ではなく、症状の改善や治療を行うものでもありません。
眠れない状態が続くとき、日中の生活に支障が出ているときは、ひとりで抱えこまず医療機関にご相談ください。