睡眠の90分サイクルとは|「90分の倍数で起きる」はどこまで本当?
「睡眠は90分サイクル」「90分の倍数で起きるとすっきりする」という言い方を、一度は耳にしたことがあるかもしれません。この言葉のもとになっている説明と、そこからどこまでが言いすぎなのかを、公的な資料の書き方にそって整理します。
- 「90分サイクル」は、レム睡眠とノンレム睡眠が入れかわる周期を指す言い方であること
- 資料の書き方は「約90分周期」で、あくまで目安であること
- 「90分の倍数で起きればよい」と言い切れない理由
「90分サイクル」とは
「90分サイクル」は、ひと晩の眠りのなかでレム睡眠とノンレム睡眠が入れかわる周期を指して使われる言い方です。「睡眠周期」「睡眠サイクル」と呼ばれることもあります。
もとになっているのは、厚生労働省のe-ヘルスネット「健やかな睡眠と休養」にある、眠りのメカニズムの説明です。
夢を見る「レム睡眠」と大脳を休める「ノンレム睡眠」が約90分周期で変動し
(厚生労働省 e-ヘルスネット「健やかな睡眠と休養」より)
性質のちがう2つの眠りが交代であらわれ、そのひと巡りがおよそ90分、という説明です。ひと晩の眠りは一本調子ではなく、ゆるやかな波のように進んでいく、というイメージになります。
レム睡眠・ノンレム睡眠とのつながり
レム睡眠は夢を見る睡眠、ノンレム睡眠は大脳を休める睡眠として説明されます。それぞれの言葉については、レム睡眠とは・ノンレム睡眠とはのページにまとめています。
「90分サイクル」=レム睡眠とノンレム睡眠が入れかわる周期のこと。資料には「約90分」と書かれており、すべての人がぴったり90分で進むという意味ではありません。
見落とされやすい「約」の一文字
この話でいちばん落ちやすいのが、「約」という一文字です。90分は代表的な目安として示された数字で、だれの、どの夜も同じ長さで進むという意味ではありません。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」にも、睡眠には少なからず個人差があり、持病などによっても睡眠の状態が変わる可能性があるため、ガイドに書かれている事柄がすべての人に常に当てはまるとは限らない、という趣旨の説明があります。周期の長さについても、一律に90分と当てはめて考えるのは無理があるということです。
「90分の倍数で起きればよい」の無理なところ
ここから広まったのが、「4時間半・6時間・7時間半のように、90分の倍数で起きればすっきり目覚められる」という言い方です。計算しやすく覚えやすいので、いろいろな場面で見かけます。
ただ、これをルールとして言い切ってしまうと、次の点で無理が出ます。
- 「約」を「ぴったり」に置きかえている…資料の書き方はあくまで「約90分周期」です。
- 眠りにつくまでの時間が計算に入っていない…布団に入った時刻ちょうどから周期が始まるとは限りません。
- 自分の周期を数えられる前提になっている…いま何巡目のどこにいるのかを、眠っている本人が知ることはできません。
「90分」という数字そのものが間違いというより、目安を厳密なルールとして扱ってしまうところに無理があります。逆算した時刻に眠れないと、かえってそのことが気になってしまうこともあります。
目安として受けとめるなら
よく聞く言い方と、資料にそった受けとめ方を並べると、次のようになります。
| よく聞く言い方 | 資料にそった受けとめ方 |
|---|---|
| 睡眠は90分サイクルで進む | 約90分の周期で変動すると説明されている。あくまで目安 |
| 90分の倍数で起きればすっきりする | 周期の長さには幅があり、時計の計算だけで狙えるものではない |
| 90分単位でないと意味がない | 倍数に合わせるために睡眠時間を短くする理由にはならない |
数字を追いかけるより、寝る時刻と起きる時刻をおおよそそろえておくほうが、毎日のリズムはつかみやすくなります。眠りにつくまでの時間の過ごし方——部屋の明かりを少しやわらげる、気持ちが落ち着く音を小さめの音量で流してみるといった工夫も、90分の計算より取り入れやすいかもしれません。
よくあるご質問
90分の倍数で起きれば、すっきり目覚められますか。
公的な資料の書き方は「約90分周期」で、ぴったり90分と決まっているわけではありません。周期の長さの受けとめ方にも幅があるため、時計の計算だけで目覚めを組み立てるのはむずかしいところです。寝る時刻と起きる時刻をおおよそそろえるほうが、日々のリズムはつかみやすくなります。
6時間は90分の倍数なので、7時間より良いのですか。
睡眠時間の長さは、90分の倍数かどうかよりも、必要な時間には個人差があるという前提で考えるほうが現実的です。厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、睡眠には少なからず個人差があり、書かれている事柄がすべての人に常に当てはまるとは限らないと説明されています。倍数に合わせるために睡眠時間を短くする、という使い方はおすすめできません。
眠りが浅いタイミングを狙って起きたほうがよいのですか。
眠りには性質のちがう段階があり、入れかわりながら進むと説明されています。ただ、その入れかわりが今どこにあるのかを、眠っている本人が正確に知ることはできません。目覚めのことが気になる状態が続くとき、日中の生活に支障が出ているときは、医療機関にご相談ください。
出典・参考
- 厚生労働省 e-ヘルスネット 健やかな睡眠と休養(本文中の引用箇所)
- 厚生労働省 健康づくりのための睡眠ガイド2023(PDF・個人差についての記載)
- 厚生労働省 睡眠対策
ご注意
この記事は一般的な情報をまとめたものであり、病気の診断・治療・予防を目的としたものではありません。アプリ「ひつじの添い寝」は医療機器ではなく、症状の改善や治療を行うものでもありません。
眠れない状態が続くとき、日中の生活に支障が出ているときは、ひとりで抱えこまず医療機関にご相談ください。